こんにちは!ばあばです。
男の子は、剣や刀にあこがれて友達とチャンバラをする時期がありますね。
ご多分に漏れずクマにもそんな時期がありました。
いや、正確にいうとチャンバラではないのですが、、、
よくあるビニール製のバットとボールのセットを欲しがるので、野球でもやりたいのかと買ってあげたら嬉々としてバットをズボンに差し込みました。
ボールには見向きもせず走り回ります。
特になにをするでもなく走り回ります。
走り回るのはかまわないんですが、困ったことに足に対してバットが長いため膝が曲がらずとにかく転んでしまいます。
止めるように言っても聞き入れず、、、
仕方がないのでミシンを使って余った布切れで「バット入れ」なるものを作りました。
白と黒のチェックでなかなかにおしゃれな代物。
ゴムを入れたベルトにバットが2/3ほど収まる袋を取り付けたのです。
それを渡したらクマはもう大喜び!!!
さっそく腰に付けて走り回ります。
何をしたいのかさっぱり分かりませんがとにかく腰にバットを下げて走り回っていました。
普段はそれで結構なんですが、お祝いの席などで外出着を着た時も小さなスーツの上にバット入れを付けます。
それこそ乗り物に乗る時も、こども劇場に行くときも、それでMCのお兄さんに呼ばれて舞台に上がった時も腰にはバットがありました。
離すのは眠ってる時だけ。
安いビニールバットもそこまで愛されるとはさぞ本望だったことでしょう。
一番困ったのはバット入れを洗ったときでした。
外に干しているとわあわあ騒ぎます。
水が滴っていても乾いてると言い張り濡れたまま腰に付けるので洋服はびしょびしょになってしまいます。
繰り返しますが腰に付けてるだけでほんとに何もしないのです。
ごくまれにバットを出し、剣道のように構え、ふうっと満足げなため息をつきバット入れに収めるのでおそらくは剣のつもりなんだろうなあと思い、ビニールの剣を買ってあげようか?というと、バットがいいと。
傷むので2ヵ月に1回くらいの頻度で買い替えていましたが、毎回バットでした。
そのうちご近所でバットを腰にぶら下げて走り回るクマは有名になっていました。
ある日裏のマンションの方が
「このあいだ、あんたんとこのお子さんのバットを指さして『それはなんだ?』と聞いたら『バットだ!!!』と叫んで、風のように去っていったよ」と。
前世が侍で廃刀令が悲しかったとか、本人なりの深い理由があったのかも知れませんね。
そんなこんなのお騒がせ時期は1年半ほど続きましたが、ある日ふいっと終わりました。
ある日バットもバット入れも見向きもされず放置され、その寿命を全うしました。
余談ですが、そのバット入れにはもう一つ入っていたものがあります。
袋菓子を空けた後、湿らないようにする二つに折るタイプの袋止めクリップがひっそりと入っていました。
クマは時々それを取り出しクリップを開けてふうっとため息をつきまた袋に戻していました。
思うにそれは彼にとって短刀のようなものだったのかも知れません。